マジックアイテムのプレゼント2
金曜日の夜。軽い残業を終え、帰宅すると先に彼女が帰宅していた。リビングで帰ってきたことを伝えると、彼女はカウンターキッチンの向こうでカクテルを作りながら、おかえりと応えてくれた。ソファで一息ついていると、
「ねぇ、まさのぶ。今日、あなたの誕生日でしょ?」
「あ。そいえば、そうだ。。覚えててくれたんですか?」
この言葉に彼女は目を見開き、
「当たり前じゃない!一度、聞けば忘れないわよ。2年も一緒にいるのよ?覚えない方がおかしいわ。」
と、若干、あきれながら、笑みを浮かべた。俺の方といえば彼女の誕生日の月しか覚えていないので、「私の誕生日は?」と聞かれやしないかヒヤヒヤしていた。
「ふふふっ。誕生日プレゼント。買ってあるわ。そこよ。」
彼女は、ステア中のマドラーをグラスから出し、ちょいちょいと、その方向を上目遣いっぽい目で見ながら指した。カクテルで表面が潤んだマドラーが指す、その先を見てると、赤い包みが一つ置いてあった。
「!!!!!!っ」
すかさず、手に取ると、ずっしりとした感じ。そして、かすかに「カコン・・・」と澄んだ音がした。
(ん?まさか!)
俺の頭は目の前の事実を先周りし、一つの像を浮かべた。それは前々から手にしたかったモノだった。
そのモノであるという事を直感的に確信した瞬間、はやる気持ちを抑えることができず、彼女が包んでくれただろう、その丁寧な包みをあわてて解いた。
「!??(ビンゴ!)」
「ひとみさん。これ、ミカメの銀のカップアンドボールじゃないですか!。・・・・。」
考えと一致したという思いと、思いもよらないプレゼントに涙腺を刺激されたが、こらえてごまかした。そして、はしゃいだ。
「前に欲しいって、言ってたもんね。買い方がわからなくて苦労したわ。」
そう言うと、俺の喜ぶ顔を見て安心したのか、うれしそうしていた。
「ねぇ、まさのぶ。早速、それで何か見せてよ。今すぐできる?何も用意してないのに、できるのかしら?」
彼女は、悪戯っぽく、そして、わざと挑戦的に言っているようだった。俺は『よし、乗ってやろうじゃねぇか』と思い、
「ん?。。いいすよ。じゃ、そこに座って。」
と応えた。
「はいはい。」
と、うれしそうな彼女は、ステアの終わったカクテル2杯を持って、テーブルにつく。
俺の演技を見慣れている彼女は、一筋縄ではいかない。かなり、目が肥えた客だ。演技がダメだと、ツッコミも来る。とはいっても、今日の場合は、プレゼントが生かされている様を見たいだけなのだろうと思った。
一瞬、彼女に背を向け、顔を引き締めてから振り返る。彼女はすっかり、お客さんの顔をしていた。
俺は一口、カクテルを口に含んで喉を潤す。酒に強い彼女が作るカクテルは、いつも濃いめだ。あまりのパンチの強さに一瞬クラッと来る。
「さ、さぁ。はじめようかな。」
と、割とスタンダードな手順で演技を始めた。
彼女は俺のマジックを飽きる程みているのだが、このカップとニットでくるんだ玉を使ったマジックだけは飽きずに見てくれる。だから、俺も練習しがいがあるというものだ。
手順の大詰め。俺はちょっと展開を変える事にした。
一輪差しの赤い花から、一枚、花びらを手で取り、もう一方の手でやさしく握り、一振り。
「あ。。。」
と彼女は声を漏らす。花びらは赤いスカーフに変化した。
彼女のグラスに刺さったマドラーを取り、スカーフでしずくをぬぐう。そして、マドラーをスカーフでひとなでした。
「・・・わぁ、、キレイ。。。」
現象よりも、その変化した大輪のバラに心を奪われているようだった。
「じゃ、一つづついくよ。」
と、伏せたカップの上にある、赤いニットの玉を、手にとり、バラを振りかざして、消す。
二個目の玉は、手のひらにのせ、バラでそっと、叩いて、消した。
最後の三個目の玉は、指先で摘むと、最初のあの赤い花びらに変化した。
「・・・今まで、そんな手順あった。。?」
彼女は現象に対する驚きと初めて見る手順に対する驚きが混じっているようだった。
「ないよ。」と言いながら、俺はたんたんと手順を進めていった。いよいよクライマックス。
伏せた三つのカップの下からそれぞれ、レモンを現していく。
一つ目、二つ目。。。そして、三つ目のカップを空ける途中で彼女は言った
「ここはいつも通りね。」
「そうだよ。ふふ。」
その後の展開を用意していたので、つい、笑ってしまった。
「な、なに?なんで、笑ってんのよ!」
勝ち気な彼女は、若干怒りながら言う。
「でもね、ここからは、ひとみさんのためだけの手順さ」
と三つのカップから現したレモンをよけ、左右の端のカップを下げた。
テーブル上にはポツンと、伏せたカップが一つ残っている。
「な、なによ。コレ。。」
少々怒り気味なところに自分のためと言われたからだろうか、戸惑い怒っている、そんな感じの反応をした。
「さぁ、なんでしょう?」
と言いながら、俺はゆっくりとカップを上げた。 その後の彼女の反応を考えただけで、口元がゆるんでしまう。
彼女の顔が一瞬止まった。
「!。。。な、なに。。なんなの。。。。?」
「何って、見たまんまじゃないですか。指輪ですよ。」
「ゆ、びわ。。。」
カップの下から出てきたのは指輪ケースだった。
俺はパカっとケースを開け、指輪を手に取り、
「ご不満ですか?じゃ、こっちの方が似合うかな。」
と指輪をネックレスに変える。
「な、何も言ってないじゃないっ!!」
また、怒る。怒った顔も、また、良い。
「まぁ、まぁ、ネックレスも似合いますよ。ほら」
首にネックレスを掛けてあげると、彼女は戸惑い困った表情で、
「違うの。指輪って、、指輪って。。まさのぶ。。。」
と下を向いたまま、つぶやく。怒ったり照れたり、今日の彼女は忙しい。
「はははは、大丈夫、ここにありますって」
と彼女の耳元から指輪を出した。
「バカっ。。」
と言って、また、彼女は下を向いた。かわいい。
俺は彼女に近づいて手をとり薬指に指輪をゆっくり嵌める。
言いたい言葉があった。あるのに、いざとなると、どれから言ったらいいかわからない。緊張する。言う内容は準備していたのに、シチュエーションが変わったからか?顔が熱くなり、背中の汗が冷ややかなモノになって、ひとすじ伝う。
「ひ、ひとみさんも、もう年が年だし、そろそろ、俺も覚悟きめなきっ。。。。」
と言いかけたところで、彼女の艶やかなくちびるで、言葉を止められてた。
「ふふっ、バカね。。年が余計よ。。」
苦笑しながら言った。彼女は続けて
「3歳しか違わないじゃない。わかったわ、結婚してあげる。」
と言うと、また、心地よい息苦しさに襲われた。
まだ、出してないテーブルのサーバントにしかけたバラの花束や、言いたいことがあったのに。
。。。。というような事があれば、マジックアイテムのプレゼントは、いつでもオッケーなんだが。
彼女のひとみさんの名前は
瞳ナナ師からでも、
瞳ダイアリーからでもなく
憂木瞳からで。
割と年上も好き。
年上だろうが、年下だろうが、
下の名前で呼ばれるのがいいね。
つうか、すげー長くなった。
それよりも、俺は奇術界のイタバシマサヒロを目指しているのだろうか。
どうなんだろうか。
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コメント
今回はなんだか生々しいね。
投稿 dj.p.k.g. | 2004.09.17 07:01
ほんとだね。生々しい。エロス!
投稿 djkazuu | 2004.09.17 19:12
深夜に書くとよくないね。
元々は、キオスク文庫棚を黒く染めている
フランス書院バリの導入でした。
投稿 たなかまさのぶ | 2004.09.18 00:54
激ワラ(^^;)。
ミカメ製の銀カップ…のくだり読んで思わずブッ!吹きだしてしまったー。
彼女の「見たことない手順」ってコメントはマニアックな反応だなー。
…っていうか憂木瞳っΣ( ̄□ ̄;)!?
投稿 にゃふー | 2004.09.18 01:30
みかめくらふとが出てきましたか・・・。
完全にやられました、今日のところはここらへんで
勘弁してください・・・。
投稿 fujiyamax | 2004.09.18 02:17
あさってとは全く関係の無い練習終了。
>ミカメの銀カップ。
ひとみさんはボーナスを使って買ってくれたのでした。
いやー、高いもん買わせちゃったなぁ。。
>見たことの無い手順。
ひとみさんは俺の同じ手順を何度も見ているので、
そいう反応をしたのでした。ええ。ええ。
ひとみさん、かわいいなぁ。(妄想余韻)
投稿 たなかまさのぶ | 2004.09.18 03:02
いやー。面白すぎる!!すっかりテジトロニカ中毒な私です。
投稿 髪形屋のMasakiです。 | 2004.09.18 16:06
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投稿 yonezou mikame | 2008.05.01 13:02